2015年08月11日

スパーホークは目を細


「面白いお話だこと」
 スパーホークは思案をめぐらせた。
「兄上の葬儀に参列する許可状は受けられたのですか」
「あら、もちろんですとも。教会は寛大にも丸三日の服喪を認めてくれました。憐れな愚かなわが兄は、国王の正装をして枢《ひつぎ》に横たわっていると、とても立派に見えたわ」王女は先の尖《とが》った長い爪《つめ》を点

検した。「死んだほうが立派に見える人というのもいるのよ」
「憎んでおられたのですね」
「軽蔑《けいべつ》していたの。憎しみとは違います。兄の前から退出すると、いつも必ず湯浴《ゆあ》みをしたものだったわ」
 スパーホークは片手を差し出し、指にはめた血の色の指輪を王女に見せた。
「国王陛下がこれと同じ指輪をはめていたのに気づかれませんでしたか」
 王女はわずかに眉をひそめた。
「ええ、気がつきませんでした。していなかったのではないかしら。誰かが遺体から盗んだのかも」
 スパーホークは歯を食いしばった。
「憐れな憐れなスパーホーク」王女はからかうような口調で言った。「大事なエラナに関する真実を耳にするのは耐えられないでしょうね。子供のころはおまえのご執心ぶりを、よく二人して笑ったものでした。今も希望はあるの

かしら。兄の葬儀でエラナの姿は目にしました。あの子はもう子供ではないのよ、スパーホーク。尻も胸も立派な女。でも今やダイアモンドの中に閉じこめられて、おまえには手の届かない存在なのではなくって? 柔らかく温か

い肌に、おまえは指を触れることもできない」
「今はそんな話をしているのではありませんよ」めた。「あなたの息子の父親は誰です」
 いきなりの問いかけに驚いて真実を話すのではないかと期待したスパーホークだったが、王女は笑っただけだった。
「どうしてわたくしにわかるはずがあります。兄の婚礼のあと、わたくしはシミュラのとある館で楽しい日々を過ごしました」アリッサは遠くを見つめる目つきになった。「楽しくもあり、利益にもなりました。大いに稼いだもの

でしたわ。ほかの女たちは自分に高い値をつけましたが、わたくしは子供のころから見聞きして、大きな富を手にする秘訣《ひけつ》は薄利多売だと知っていました」悪意ある目をドルマントに向け、「しかも商品は、何度もくり

返し売ることのできるものでしたしね」
 ドルマントの表情が硬くなるのを見て、アリッサはかすれた笑い声を上げた。

Posted by お絹に怒鳴った at 12:33│Comments(0)
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